2018年6月27日水曜日

6月議会が閉会 過労死対策の意見書は否決

 6月27日、6月議会の最終本会議が開かれ、各議案の採決、各種報告、意見書の提案・採決が行われました。

 共産党市議団として、『過労死の根絶と働き続けられる社会の実現を求める意見書』を提案し、討論に立ちました。

原案では
 長時間労働とそれに起因する過労死――過労自殺が大きな社会問題となっている。他の先進国にはこうした事例は少なく、『KAROSHI』がそのまま国際語として採用されている。

 本来、労働は生活を営む原資(賃金)を得る行為であり、それによって命を落とすということは本末転倒である。

 AI技術の発展など、労働負担を軽減させる科学技術の進歩は目まぐるしく、こうした技術を取り入れながら、労働時間の短縮等、働き続けられる環境づくりが求められる。

 以上のことから、過労死の根絶とすべての労働者が安心して働き続けられる社会の実現を要望する。
と、ものすごくシンプルな内容にしましたが、事前の調整の中で、これには乗れないと会派『明るいみらい大和』から対案が出され、「高プロを含む働き方改革が労働者の心身を守るために審議されている」という驚きの内容でしたが、『自民党・新政クラブ』『公明党』『明るいみらい大和』の賛成多数で、対案が採択されました。(こちらの案は否決。この程度の内容でも採択できないとは情けない)

 最終的に6月議会に提案された意見書はこちらから(PDFが開きます)

 過労死の根絶と今国会の目玉法案である(とされている)『働き方改革関連法案』は、相容れない存在であることは、明らかです。全国の労働組合をはじめ、弁護士会、過労死被害の家族会など、様々な方が「過労死を促進させる」と反対の声を上げています。

 今日本社会に求められているのは、”企業がもっとも活動しやすい国”になることではなく、”国民一人ひとりが普通に暮らしていける社会制度”をつくることではないでしょうか。


以下、意見書の討論原稿(長いです)


日程第21 議員提出議案第14号 過労死の根絶と働き続けられる社会の実現を求める意見書について、日本共産党大和市議団を代表して、賛成の立場から討論を行います。


 本文にもありますように、過労死という現代社会において、日本特有となった労働者を使い捨てに働かせ方は、ローマ字でそのまま過労死と輸出されています。なぜ、生きるための労働で、命を落とさなければいけないのでしょうか。

 過労死は、決して労働者の、自己責任ではありません。雇用者と被雇用者という力関係において、労働者が自らの仕事の総量をコントロールすることはできません。ですから、所定労働時間内に仕事を終えることができなければ、残業や休日出勤をせざるを得なくなります。

 今月21日の東京新聞には、「残業代ゼロ=高プロ 導入是非は」と題して、東洋大学教授の竹中平蔵氏がインタビューに応じ、その中で「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」と、もう一つの肩書である、大手人材派遣会社パソナグループの取締役会長としての本音を隠すことなく言い放っています。いくつもの間違いがこの発言にはありますが、例えば、一つの仕事が終わるまえに、新たな仕事を追加された人は、時間内に仕事を終えられない人になるわけですが、仕事を終えられない理由は、労働者本人の生産性にあるのでしょうか。労働者には、所定労働時間で対処しきれない仕事を押し付け、労働者の時間を、身体を、心を削って生み出された利益を経営者や派遣会社はかすめ取ることで、利益を上げてきました。そこへの反省がないままに、残業代も払わない、長時間労働をさせるというのは、まさに過労死を促進させることになります。そもそも、残業代とは所定労働時間を超えて、労働者に仕事をさせた企業―使用者に「払わせる」ペナルティであり、いわば罰金のようなものです。決して、労働者が「払ってもらう」補助金の類ではないことは、ここでキッパリと否定しておきたいと思います。ましてや、労働者がいるから利益を生み出せるのですから、働いた分くらいの賃金は払え!というのが、労働者の声ではないでしょうか。

 平成29年度、2017年度の過労死等防止対策白書によれば、2016年度の自殺者は、約2万2千人で、そのうち勤務問題、つまり働き方が原因で自ら命を落とした方が1978人と約1割を閉めています。命を落とすところには至っていなくても、働きすぎが原因で、心や身体を壊すという事態は、誰もが他人事ではない状況になっています。毎日のように、首都圏鉄道では、人身事故などのトラブルが発生していますが、こうしたことが続発する要因のひとつに、「働きすぎ」があることは、誰でも想像できることです。

 こうした状況のもとで、政府が今国会の目玉としている「働き方改革」は、労働者の生活や健康を守るという願いに立っているのでしょうか。

○残業時間の規制では、月平均80時間、繁忙期には100時間までという内容で、一般に過労死ラインと言われる月80時間の残業を容認する内容です。

○裁量労働制については、審議の前提となるデータが政府案に都合のいいように改ざん・捏造されていたことで、今回は削除となりましたが、仕事のやり方について、労働者が裁量を持ったとしても、仕事量そのものに裁量があるかといえば、そうではないケースがほとんどではないでしょうか。こなしきれない仕事量を押し付ければ、定額働かせ放題となることは、目に見えています。

○高度プロフェッショナル制度についても、年収1075万円以上の一部専門職を対象に労働時間の規制から除外し、本人の生活リズムや納期にあわせて仕事ができるとしています。しかし、この年収1075万円も、出来高払いのような形で、仕事が終わり、成果賃金分が支払われるような契約。毎月25万円と成功報酬800万円で、1075万円を超える方も対象にできるかとの日本共産党の吉良よし子参議院議員の質問に対し、山越労働基準局長は「最低賃金に違反しなければ、個々の労使で支払い方法は定められる」と、こうしたやり方を認めました。労働者は、成果が上がらなければ、契約した報酬を受け取ることができず、使用者は、成果が上がらないことを理由に長時間労働を強要することができるという大きな問題もこの間の国会質疑の中で明らかになっています。

これだけでも、現在審議されている「働き方改革」が労働者を守るものではないことは、明らかです。日本共産党は、5月11日、政府の働き方改革への対案として、「労働基準法等改正大綱」を発表。主な柱は

 ○高度プロフェッショナル制度の削除。企画業務型の廃止など裁量労働制を見直す
 ○残業時間上限を月45時間、年360時間とし、連続11時間の休息時間を確保
 ○実労働時間を正確に把握・記録させ、サービス残業代は2倍にする
 ○パワハラ・セクハラへの規制強化
 ○同一労働同一賃金と均等待遇を明記し、正規と非正規、男女の格差をなくす
 ○雇用対策法改定案から「生産性の向上」「多様な就業形態の普及」を削除し、雇用対策法を変質させない

の6点で、どちらが過労死の根絶と働き続けられる社会の実現に資するかは明白です。

 なお、日程第22 では、対案として「議員提出議案第15号 過労死の根絶と安心して原たくことができる社会の実現を求める意見書」が提案されていますが、先ほども述べたように「働き方改革関連法案」は「勤労する国民の心身にわたる健康を守」る内容にはなっていません。また、残業代ありきの生活設計を強要してきたのは、この間の労働法制の改悪であり、働き方改革はその集大成とも言えます。政府の働き方改革は、労働者を守る立場ではなく、使用者が労働者を都合よく使うためのものであり、決して容認できません。案文では、「裁量労働制の適用範囲の問題等、今後も注視していくべき課題がある」とありますが、いわば、課題しかないものを注視したところで、労働環境が改善されるわけがないのであります。

 過労死対策として、働き方改革関連法案が成り立たないことから、「議員提出議案第15号 過労死の根絶と安心して働くことができる社会の実現を求める意見書」には賛成できないことを付け加えて、「議員提出議案第14号 過労死の根絶と働き続けられる社会の実現を求める意見書」についての賛成討論といたします。

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